台湾茶 その魅力 おいしさをお伝えしたいから (2)

 引き続き、某ネットメディアでのインタビュー記事をお届けします。
台湾茶の魅力と奥深さを知っていただければ、幸いです。
 

 

台湾茶に魅せられて ~台湾茶を日本の食文化に根づかせたい~ (中)

 
前回 からの続き)
 

――日本のお茶文化は中国から伝わったとのことですが、台湾茶のルーツはどうですか。
 

岸本: 中国茶の産地は、大紅袍(ダーホンバオ)などで知られている中国の伝説的高級茶、武夷(ぶい)山岩茶が採れる福建省武夷市が有名ですが、その福建省から台湾の人が茶樹を持ち帰ったのが始まりです。19世紀頃のことで、福建省の産地に気候がよく似た南投県(なんとうけん)鹿谷郷(ろこくきょう)の凍頂山にその茶樹を植えたのがスタートといわれています。
 
 日本が統治していたときに開発した紅茶の品種もありますが、そのベースはアッサムの木を日本の農業技師などが植えたのが始まりです。中国・福建省武夷山市は、「深山幽谷分け入って」というイメージとは裏腹に、大紅袍景区で標高約380m、岩茶の母樹があるという天心岩は標高約300mしかありません。台湾の場合は、凍頂山で標高約730m、杉林渓地区だと標高1200~1600m、梨山・大禹嶺(ダーユイリン)地区だと標高2000~2400 mにもなります。台湾の高山茶は圧倒的に標高の高いところで栽培されているんです。
 

――台湾茶と名乗るお茶は、台湾で収穫されるお茶の量よりも、世界での流通量の方が多いということですが、このことについて何かおっしゃりたいことはありますか。

 
岸本: お茶という商品はそういう宿命なんです。静岡茶にしても、静岡での茶葉の収穫量以上の大量の商品が静岡茶と銘打たれて世の中に出ています。静岡以外の土地で採れた茶葉を、加工のみ静岡で行っているものでも静岡茶と呼ばれているのです。台湾茶でも同じで、ベトナム辺りから入ってくる安い茶葉で増量されたりすることがよくあります。
 
 それらは、行きすぎたもうけ主義のなせる業でしょうか、残念なことですが、本物ではない台湾茶が世の中にあふれているのが現状です。日本の消費者のみなさんは、なかなか本物の台湾茶に巡り合うチャンスがないのでは、と感じています。私は、本物の素性のはっきりしたお茶、上質で美味しい台湾茶を、ちゃんと茶畑を見せてくれた信頼のおける茶商から直接買い付けて扱っていきます。私自身が本物の台湾茶の大ファンなのですから。

 

 

日本人にも親しまれやすく味わい深い4種類の台湾茶
 

――日本茶・中国茶・紅茶と様々な種類のお茶がありますが、他のお茶と違うところは何ですか。 
 

岸本: お茶の種類の違いは、主に発酵度の違いなんです。日本の緑茶は不発酵茶、烏龍茶は半発酵茶、紅茶は全発酵茶となりますが、台湾茶は半発酵茶が主体です。どこまで発酵させるか、発酵を止める際の焙煎をどれだけ強くするか、その条件の差で、いろんな味わいのお茶がつくられています。
 
 同じ烏龍茶の仲間でも、台湾茶は、皆さんが日本の中華料理店やペットボトルで慣れ親しんだ烏龍茶とは全然違った風味が味わえます。中国大陸とは味の好みが違うので、苦み・渋み・えぐみの少ないすっきり爽やかで繊細な味わいのお茶に仕上がっているのが、台湾茶の特徴です。それから、日本の皆さんはあまりお気づきではないのですが、日本茶だと1~2回で出がらしになってしまうところが、台湾茶だと5~6回はお湯を注いで飲めます。しかも、1回目から6回目までそれぞれの味わいが楽しめ、最後も6回目だから薄くなりすぎるということはありません。日本茶の感覚とは違うんですよね。

 

――お茶の種類はどれくらいありますか
 

岸本: その昔、中国から台湾に伝わった4大品種があって、その中の青心烏龍(チンシンウーロン)・青心大冇(チンシンターモウ)は廃れず今も盛んに栽培されています。戦後台湾で品種改良が進められた結果生まれてきた新種の代表格が、台茶12号(金萱=きんせん)と四季春です。私のところでは、これら4種類の茶葉から作られたお茶をご紹介しています。
 
 青心烏龍は小葉種で、凍頂烏龍茶、清香烏龍茶など半発酵のお茶(=烏龍茶)を作るのに適した茶種です。樹形はやや小ぶりで、葉は長楕円形、樹勢は比較的弱く、枝枯れ病にもかかりやすいのですが、お茶の品質がずば抜けているため、台湾の各産地ではこぞってこの品種を栽培しています。
 
 青心大冇は桃園、新竹、苗栗などの平地が主な産地です。青心大冇の葉がウンカに刺されると、防御反応で香気物質を生成します。そこから生み出された東方美人茶は香りが素晴らしく、青心大冇は東方美人茶を作るのに最も適した茶種です。
 
 台茶12号(金萱)はそのまま金萱茶というお茶になります。樹形は比較的大きく、樹勢があって枝葉が生い茂り、葉は楕円形で葉肉が厚く、葉の色は光沢を帯びた濃緑です。芽は緑色の中に紫が交じり、産毛が多いのが特徴です。お茶としては、淹れるとまろやかでコクのある味わいがあり、香りは独特のミルクのような香り(奶香=ナイシャン)があります。
 
 四季春もそのまま四季春茶になります。台北郊外の木柵(もくさく)という産地の茶畑で発見された早生種です。このお茶には独特のさわやかな風味があり、作付面積は増えてきましたが、美味しいお茶にするための体系的な取り組みはまだこれからというところです。独特のさわやかな風味を青臭いという人もあって、好き嫌いが分かれるのですが、その独特のさわやかな風味がお気に召すなら、非常にコストパフォーマンスのよいお茶といえます。

 
――それぞれの味の違いなどを考慮して、どんなときに何を飲むのが良いでしょう?

 

岸本: 味がしっかりしているのは凍頂烏龍茶で、発酵度合いと焙煎度合いがしっかりしています。日本人がイメージする烏龍茶に一番近い味わいなので、烏龍茶を飲むシーンで、普通にお飲みになるといいでしょう。さっぱりしていて日本茶に似ており、違和感なく普段使いで飲めるのは清香烏龍茶です。
 
 一番香りを楽しめるのは東方美人茶。葉っぱがウンカに食べられて作り出された成分によって旨みが葉っぱ自体に生成されて、いい香りがします。ジャスミン茶が好きな人にはぜひ東方美人茶を試していただきたいですね。ジャスミン茶はあとからジャスミンの花で香りをつけていますが、東方美人茶は茶葉自身が香りを発しています。甘い香りなので、ティータイムに紅茶とケーキが欠かせない人も、紅茶に代えて東方美人茶を飲めば、砂糖なし、ケーキ無しでも満足できて、ダイエットになるかもしれませんよ。
 
 日本人好みで違和感がなく、すっと入ってくる清香烏龍茶に対して、烏龍茶らしい味わいが強いのは凍頂烏龍茶です。凍頂烏龍茶といえば、元来は凍頂山という場所で採れたお茶を指しましたが、今では一般的に標高800m以上のところで採れる高山茶葉を使って、発酵・焙煎をしっかりさせた烏龍茶の伝統的な作り方をしているお茶のことをそう呼んでいます。

 
 凍頂茶とは、頂上が凍っているということではなく、急な斜面で収穫するために足をつま先立ちしながらでないと茶摘みできないので、「つま先立ち」という意味の台湾原住民の言葉で、発音の似ている「凍頂」という漢字を当てたんです。焙煎がしっかりしているので、体を冷やしにくく、冬場など温かいお茶で暖まりたいときに飲みたいお茶です。

 
――岸本さんが実際によく召し上がるのはどれですか。
 

岸本: さっぱり系の清香烏龍茶が好きで、日常的に飲んでいます。時々気分を変えて、凍頂烏龍茶も楽しんでいます。
 紅烏龍というお茶も好きですが、これは高いお茶なんですね。台湾の東海岸側であまり茶葉そのものに特徴のないお茶を作っている農家が、付加価値を付けようと発酵と焙煎に工夫を重ねて、紅茶と烏龍茶の両方の味わいを持ったお茶を作ったのが始まりですが、これも美味しいです。今日本で売られている紅烏龍も島の太平洋岸の台東(たいとう)などの低地で採れるものが多いですが、私のところでは、高山の茶畑で採れる良質な茶葉からつくった希少な紅烏龍を扱っています。一煎ごとにどんどん風味が変わっていく楽しさがあります。

 
 
次回につづく

 


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